【はたらく魔王さま】恵美「魔王と私の子供が可愛くて困る」
凛々しく整った容姿と腰まで伸びた長い髪。
初夏の陽気に滲む汗をハンカチで拭き取りながら、
やがて彼女は目的地――マグロナルド幡ヶ谷駅前店に
辿り着くと、自動ドアの前に立った。
店員「いらっしゃいませ! ……ああ奥さん、お久しぶりです」
顔見知りの店員が声をかけてくる。
事情があり数えきれないほど店に通いつめているため、
彼女は既に店員の間でも身内扱いだった。
奥さん、と呼ばれた瞬間彼女は
わずかに顔を引きつらせたが、素直に挨拶を交わした。
店員「真奥さんならもう上がりましたよ。多分もうすぐ……あ、来た」
店員の向いた先から、二十歳そこそこと思わしき黒髪の男性が現れる。
彼女の姿に気づくと、軽く片手を上げた。