【モバマス】高垣楓「夫婦と間違われちゃいましたね」
吹き付ける風がとっても気持ちよくて、思わず歌ってしまう。
伴奏は、風と、揺れる木々が奏でる音。
それに合わせてランランと歌うだけで、特に曲は意識していない。
ふふっ、これじゃあアイドル失格かしら?
「高垣さん」
「はい、何ですか?」
観客は一人だけ。
背の高い、無表情で、とっても可愛らしい彼だけ。
「あまり遠くに行くと、戻るのに時間がかかってしまいます」
「は~い♪」
私達は、田舎の温泉街に来ている。
……と言っても、彼の担当する子達も一緒のロケ。
此処には、お仕事で来ているのだ。
「あの……」
「うふふっ、だって、こんなに綺麗な空気の中をお散歩しないなんて、勿体ないと思いません?」
「……」
彼は、右手を首筋にやりながら、困った顔をした。