【モバマス】高垣楓「正しい傘の使い方」
突然の、雨。
午前中は降らない予報だったのに、なんて気まぐれな雨なのかしら。
事務所まではもう少しの距離だけど、カフェの軒先で雨宿り。
「ホットコーヒーで、ホッと一息……」
ついてるだけの時間は……ないわよね。
あぁ、それにしてもついてないわ。
どうして、よりによって折り畳み傘を持っていない時に、こんな――
「……高垣さん?」
――なんて、思っていたら、よく見知った顔がこちらを見ていた。
いつもの無表情の彼だけど、驚いているのがわかる。
……と言うか、そんなにキョトンとする必要は無いと思いません?
私だって、こういう時もあります。
「――おはようございます」
だから、あえていつも通りの朝の挨拶をする。
こんなの、なんて事ないですよ、という強がりも込めて。
「おはよう、ございます」
そんな強がりを意に介さず、彼もまた、いつも通りに挨拶してきた。
左手にカバン、右手に傘を持っているのに、その姿勢はとても綺麗。