【モバマス×化物語】阿良々木暦「ちひろスパロウ」
・化物語の設定は終物語(下)まで
・ネタバレ含まれます。気になる方はご注意を
・終物語(下)より約五年後、という設定です
001
人の欲は無限だ。
キリストが示した人間の七つの大罪にも含まれるように、欲望というものは果てがない。
例えば百万円稼いだとする。
その時は嬉しいだろうが、次は二百万でなければ満足できないのが人というものだ。
僕はそこまで自分が強欲だとは思わないが、それでもこの資本主義経済システムにおいて日本銀行券はいくらあったところで困らないし、ひたぎという恋人がいながら何人もの美人に囲まれて迫られたら完全に拒絶できる自信はない。
それは僕の未熟ゆえ、という部分もあるのだが、言いたいことは欲というものはそれ程に魅力的であり、人の行動原理であり、甘露であるという事実だ。
アイドルのファンになるのだって、欲だ。
ファンになっておいて仲良くなりたくない、結婚したくない、なんて考える人間はまずいまい。
トップアイドルを目指すのだって、僕がアイドルを育てたいと思うのだって、最終的に行き着く場所は欲望、だ。
だから、それ自体を否定はしない。
出来るわけもない。
欲を失った人間など、歩く氏人に変わりがないのだから。
話の舵を九十度ほど転換しよう。
僕の所属するアイドル事務所、シンデレラプロダクションにはとてつもない数のアイドルが所属している。
それでいて質より量、ということもなく各々が違った魅力を持っているから凄絶の一言に尽きる。
そんな状況下で事務仕事と僕のサポートをその一身に受ける人がいた。
千川ちひろ、年齢不詳。
まだ若い身空でありながらパワフルな行動力と的確なアドバイスでアイドル達と僕のようなプロデューサーを導いてくれる存在でもある。
正直、彼女がいなかったらシンデレラプロダクションは回転しないんじゃないかと疑ってしまうほどだ。
だが人間というものは上手くバランスが取れている。
そんな、悪魔将軍よりも完璧に形容出来そうな彼女にも、確かに瑕と呼ぶべき悪癖があるのだ。
それは彼女の名誉を傷付けてしまう恐れがあるため、とてもではないが僕自身の口からは言えないが――。
ともかく、彼女はその悪癖が故に怪異と行き逢う結果となってしまったのである。
彼女は、雀に庇われた。