モバP「翠色の絨毯で」【前編】
・人生の初心者です。
・地の文有りです。
・一回の投下数は少なめです。
・色々原作と差異があれば申し訳ないです。
長丁場になるかもしれませんが、よろしくお願いします。
午前。営業に出る前にパソコンでメールをチェックしていた時、机においていた肘の近くに氷の入った冷茶が置かれた。
「切り替え早いですね。…もう少し余韻に浸ってもいいと思いますよ、プロデューサーさん」
緑色が目を引く制服を来てお盆を胸に抱いた女性――千川ちひろが、パソコンの画面を覗きこんで言った。
「そうも言ってられませんよ。これで満足しているようじゃ、中小のウチは持ちませんし…何より、きっとアイツもあれがゴールだなんて思ってないはずです」
安っぽい小さなテナントを借りて経営を行っている芸能事務所。
俺はそこでプロデューサーとして働いていた。
「…ですね。ああ、少なくとも半年ぐらい安心できる経営計画が立たないかなあ」
ちひろさんは苦笑する。
事実、今この事務所ではたった一人しかアイドルが所属していない。
そもそも、ここだって規模で言えばつい最近できたようなものだ。
「それは俺たちの腕次第ですよ」
ありがたく冷茶を体内に注いでから言うと、ふと耳に聞き慣れた音がする。
「――あ、来ましたね」
ちひろさんも聞いていたようで、しっかりしてるなあ、と一言漏らしていた。
とん、とん、とん。薄いこの事務所の壁など余裕で貫通する階段を上る音。
「…でもまあ、余韻に浸るのも悪くないか」
そのまま廊下を越えれば、すぐに事務所の扉が開く。
「おはようございます、プロデューサーさん」
「おはよう、翠」
開いた扉の先には、昨日のライブの主役が居た。