サンタクロース外伝 「禊は雪に埋もれて」
たまにはストレートなものが読みたい方向け
12月5日の夜
箱を見つめている
それはまだ少年だったころにサンタから貰ったもの
開けずにとっておいたのだ
世界各国に伝わるサンタクロース伝説
その内容は土地により様々だ
この土地でも一般のそれとは少し違うところがあった
箱を手にとる
「ずいぶん軽いな」
振ってみる
何の音もしない
手応えもない
「やっぱりカラか」
ふつうなら予め何かしらのプレゼントが入っているはずだ
だが、なぜかこの地域ではそうではなった
もらったときはカラ箱なのだ
だが、開けた少年たちの話では開けると何かしら入っているらしい
もう一つ、変わっていたところがある
ふつうなら良い子はプレゼントをもらえるが悪い子はもらえない
だが、天使のような性格の子もワルガキも分け隔てなく欲しがっていたプレゼントをもらっていたことだ
そして、ワルガキだった私もこの箱をもらっていたのだ
ただ、私は他の少年と違い、その箱を開けずにとっておいた
なぜなら彼らの話を聞いて「その箱の中身は、もらった人がその時一番欲しいものだ」と気づいたからだ
そして時がたち、大人になった私にどうしても欲しいものができた
人をあやめてしまった私が一番欲しいもの
それは――
私は箱の縁に手をかけ、フタをもちあげた